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中医学の根本概念

 ・温故知新    ・天人合一の哲理    ・神農本草経    ・黄帝内経

 中医学の基本は自然の観察にあります。   中医学では、大自然への感謝と畏敬の念を重視します。  これを忘れ、無視してしまうと生命は存在できないということなのです。
 至極当然のことだと思われるでしょうが、中医学は、我々の想像を絶するほどに自然との結びつきを大切にしています。


■温故知新(おんこちしん)

温故知新の意味は?「古きをたずねて新しきを知る」です。 この有名な言葉は『論語(ろんご)』にあります。
『論語』という書物は中国,春秋時代の学者、思想家の孔子(こうし)紀元前551年~前479)の言行録です。
「子曰、温故知新、可以為師矣」 (子曰く、故きを温ねて新しきを知れば、もって師たるべし)
意味:歴史を深く探求することを通じて、現代への認識を深めていく態度、これこそ指導者たるの資格である。


■天人合一の哲理


天人合一とは、人間も天(宇宙・地球・自然)も全て一緒なんだ、という意味です。 また人体は小宇宙であり、大宇宙である自然の法則によって生かされている存在なのだ、とも説きます。
人が死ねば、胃腸も心臓もすべて死んでしまうように、地球が病めば我々人間も病みます。

そう考えると、癌が私達の体をむしばみながら増殖していくのと、我々人類が、地球をむしばみ環境を破壊していくのと、よく似ていると思いませんか?
それならば癌を治すために、本当に必要なことは何でしょうか? これらのことが深く理解できると、環境を守ることも世界の平和も、私たちの健康も、実は同じことだということになるでしょう。
この考え方は、生命体にもあてはまるものなのです。 1つの受精卵から始まった命は細胞分裂を繰り返し、60兆個もの細胞の集まりとなり、私達の体を形造ります。
髪の毛・手足・胃腸・心臓・・・みなそれぞれ形も役割も違いますが、もとは同じ受精卵から出発した仲間なのです。
これに大変よく似た関係があります。地球と私達の関係もこれと全く同じではないでしょうか?
はるか昔に、宇宙のどこからか塵が集まって出来たといわれるこの地球。それが全てのはじまりです。 いわばそれが受精卵と同じようなものなのです。
そこから天文学的な偶然を経て、あるものは植物に、あるものは昆虫に、またあるものは人間へと姿を変えていったわけで。 スケールこそ違うけれど、私達の誕生とそっくりなんです。
人間も石ころも植物も、全ては宇宙の塵から形作られた仲間です。 確かに石ころと人間とでは、姿形も役割もまるで違いますが、それは髪の毛と心臓が違うと、いうのと同じことですから。


■神農本草経(しんのうほんぞうきょう)

神農本草経 中国最古の本草書。
後漢の時代(25~220)には、生薬に関する知識の集大成ともいえる神農本草経がまとめられたといわれています。
本書には365種の生薬が収載されており、上薬、中薬、下薬の3群に分類されています。


●上薬120種は「君であり、生命を養うを主とする。天に応じ、無毒、多服久服しても人を傷わない。
身を軽くし、体力を益す、不老長生の薬」と規定され、今日の保健薬の概念にあたります。 つまり上薬とは、生命を養うもので、長期間使用して徐々に体質を強化するものです。
他の薬による副作用をも軽減します。甘草(かんぞう)や大棗(たいそう)などが代表例です。

●中薬120種は「臣であり、性を養うを主とし、人に応じて無毒と有毒があり、適宜配合し、病を防ぎ、体力を養う」とされ、 今日の強壮・予防薬に該当するでしょう。
つまり中薬とは、 病気を治し、元気を回復させる薬です。 少量か適正期間であれば毎日服用できます。葛根(かっこん)や麻黄(まおう)などがあります。

●下薬125種は「佐使であり、病を治すを主とし、毒性も強いので、長期の連用はつつしむべし」と規定され、治病薬というべき薬物に当たります。
この神農本草経は、後世の本草書すべてに影響を与え、本草書の祖本ともいうべきものになっています。つまり下薬とは、病気を治す作用は強いのですが副作用も出やすということです。
摂取量や摂取期間を十分に注意しなければなりません。附子(ぶし)、大黄(だいおう)などがあげられます。



農・薬の始祖
神農氏曰く「食物による疾は食物で治せ。
毒物による疾は水と塩で治せ。」

神農とは、中国古代の伝説の帝王で、人身牛首の姿をし、人々に農耕を教え、百草をなめて医薬として使えるか否か、を決めたと言われてます。 
また、本草とは、紀元前の前漢の時代から始まった不老長寿の学問です。 不老長寿を求める願いが、病気を治す薬学へと発展して集大成されたものです。
つまり『神農本草経』とは、神農の世(紀元前300年代)から伝わる薬学の辞典というわけです。
編集されたのは後漢(西暦100年代)の時代からですから、1800年以上も前の辞典でありながら、 その内容の多くは、現代でも充分通用するものです。


■黄帝内経(こうていだいけい)


前漢時代(紀元前202~紀元後8)に著され、後にまとめ直されたものが現在に伝えられています。
医学理論が書かれた「素問(そもん)」と、その理論に基づく針灸治療法がまとめられた「霊枢(れいすう)」の、2部構成となっています。
現存する中国最古の医学書です。 「黄帝内経」(こうていだいけい)の中に食塩に関する記述がありますが、食塩と健康についての世界最古の文献と考えられています。

●「水の代表である海や鹹湖(かんこ)からは塩がとれて、鹹味(からみ)をもっています。 しおからい鹹味の食物は、人体内では腎臓を営養します。」

●「五入といって、五味の物が親和性をもって入る臓はきまっているものである。 酸の物は肝、苦の物は心、甘の物は脾、辛の物は肺、鹹の物は腎に入るものである。」



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